以前、ChatGPTに「何かおもしろいこと言って」と頼んでみた。
そこで返ってきた回答が案外面白く、なぜ面白いと思ったのかを考えていたら、自分の笑いの好みまで分析することになった。
そんなことをやっていたら、今度は別のことが気になった。
ChatGPTに漫才を一本丸ごと書かせたら、どのくらい面白いものができるのだろう。
せっかくなのでやってみることにした。
ChatGPTに漫才を書いてもらう
細かく条件を指定してしまうと、私の好みに合わせた漫才になってしまう。
それでは「ChatGPTが自分で面白いと思う漫才」を見ているのか、私の好みに合わせたものを見ているのか分かりにくい。
そこで、できるだけ条件を付けずに、次のプロンプトを新しいチャットで送った。
二人組の漫才を一本作ってください。
実際に二人の芸人が舞台で演じることを想定し、最初から最後まで台本として書いてください。
漫才のテーマ、二人のキャラクター、ボケとツッコミの形式、長さなどは自由に決めてください。
私の好みを確認するための質問はせず、あなた自身が「面白い漫才になる」と考えるものを作ってください。
そして出来上がったのが、「未来から来た俺」という漫才だった。
ChatGPT作「未来から来た俺」
漫才「未来から来た俺」
登場人物
ボケ:山田
妙に冷静。荒唐無稽なことを当然の事実として話す。ツッコミ:佐藤
常識人。山田の話を疑うが、だんだん細部の妙なリアリティに巻き込まれる。
(二人、登場)
二人「どうもー、よろしくお願いしますー」
佐藤「いや最近ね、歳とったなあと思うことが増えまして」
山田「分かる」
佐藤「階段上っただけでちょっと息切れしたりね」
山田「俺も最近、老後のこと考えるもん」
佐藤「まあ大事ですよ。まだ先とはいえ」
山田「だから昨日、老後の俺に会ってきた」
佐藤「ずいぶん直接的な老後対策だな」
山田「未来から来たのよ。78歳の俺が」
佐藤「未来から?」
山田「夜中にピンポーンって」
佐藤「タイムマシンで来いよ」
山田「玄関開けたら、俺が立ってんの」
佐藤「78歳のお前が?」
山田「第一声が『久しぶり』」
佐藤「初対面だろ」
山田「向こうは久しぶりだから」
佐藤「ややこしいな」
山田「俺も最初は信じなかったよ。でも顔が完全に俺なの」
佐藤「78歳だからだいぶ変わってるだろ」
山田「うん。だから顔では判断できなかった」
佐藤「今、完全に俺って言っただろ」
山田「でも証拠を見せてきた」
佐藤「どんな?」
山田「『お前の右膝には、小学生のとき転んだ傷がある』」
佐藤「おお」
山田「なかった」
佐藤「誰だよ!」
山田「78年も生きてると記憶が曖昧になるんだろうな」
佐藤「偽物を老化で処理するな」
山田「でも次に『お前は冷蔵庫のプリンを楽しみにしている』」
佐藤「それは?」
山田「あった」
佐藤「弱い! 未来人の証明がプリン一個!」
山田「しかも『賞味期限、今日までだぞ』って」
佐藤「冷蔵庫見ただけだろ」
山田「怖くなったね」
佐藤「防犯的な意味でな」
山田「で、聞いたの。『未来の俺が、なんでわざわざ来たんだ』」
佐藤「そうだよ」
山田「そしたら真剣な顔して、『人生を変えるためだ』」
佐藤「おお、未来で何かあったんだ」
山田「『お前は明日の昼、ラーメンを食べようとしている』」
佐藤「規模が小さいな」
山田「『やめておけ』」
佐藤「何が起こるんだよ」
山田「『チャーハンにしろ』」
佐藤「定食屋の常連がアドバイスしに来ただけだろ」
山田「未来の俺が言うには、そのラーメンを食べることで俺の人生が大きく変わるらしい」
佐藤「どう変わるんだよ」
山田「ラーメンを食べる」
佐藤「そこは知ってるよ」
山田「おいしい」
佐藤「良かったじゃねえか」
山田「替え玉する」
佐藤「うん」
山田「お腹いっぱいになる」
佐藤「そりゃそうだ」
山田「午後、眠くなる」
佐藤「うん」
山田「昼寝する」
佐藤「うん」
山田「夜、眠れなくなる」
佐藤「ちょっと人生動き始めたな」
山田「深夜までスマホを見る」
佐藤「嫌な方向にな」
山田「動画サイトで偶然、陶芸の動画を見る」
佐藤「急に?」
山田「陶芸にハマる」
佐藤「ラーメンから?」
山田「会社を辞める」
佐藤「待て待て待て」
山田「信楽に移住する」
佐藤「替え玉一個で人生曲がりすぎだろ!」
山田「そこで運命の女性と出会う」
佐藤「おお」
山田「結婚する」
佐藤「いいじゃん」
山田「子供が二人生まれる」
佐藤「最高じゃねえか」
山田「だから絶対ラーメンを食うな」
佐藤「なんでだよ!」
山田「未来の俺が泣きながら言うの。『頼む。チャーハンにしてくれ』」
佐藤「家族消そうとしてるじゃねえか!」
山田「よっぽど陶芸が嫌だったんだろうな」
佐藤「そこじゃねえよ! 奥さんと子供はどうなるんだ!」
山田「未来の俺もそこは悩んでた」
佐藤「そりゃそうだろ」
山田「『家族は愛してる。でも陶芸はもう限界だ』」
佐藤「転職しろよ!」
山田「78歳だから」
佐藤「もっと早く来いよ!」
山田「タイムマシンが完成したのが78歳だから」
佐藤「陶芸家のお前、タイムマシン作ったの!?」
山田「ろくろ回してたら偶然できたらしい」
佐藤「何をどう回したんだよ」
山田「時空を」
佐藤「ろくろで時空を回すな!」
山田「だから俺も聞いたよ。『チャーハンにしたらどうなるんだ』」
佐藤「そうだよ。別の未来になるんだろ?」
山田「『分からない』」
佐藤「無責任だな!」
山田「未来が変わるからね」
佐藤「まあ、そこは分からないのか」
山田「でも未来の俺が言うには、『少なくとも陶芸家にはならない可能性が高い』」
佐藤「何を根拠に?」
山田「チャーハン食ったら午後も元気だから」
佐藤「チャーハンも眠くなるだろ!」
山田「そこ俺も指摘した」
佐藤「未来人相手に栄養学の話すんな」
山田「そしたら未来の俺が固まった」
佐藤「え?」
山田「『……確かに』」
佐藤「78年間気づかなかったの!?」
山田「それから二人で30分ぐらい、何食べればいいか話し合った」
佐藤「人類初の時間旅行を昼飯相談に使うな」
山田「そばは?」
佐藤「知らねえよ」
山田「未来の俺も『そばなら……』って」
佐藤「なんでちょっと希望があるんだよ」
山田「でもアレルギー怖いなって」
佐藤「お前そばアレルギーなの?」
山田「ない」
佐藤「じゃあ食えよ!」
山田「未来で発症する可能性あるから」
佐藤「未来人いると話が進まねえな!」
山田「最終的にカレーになった」
佐藤「なんで?」
山田「俺も未来の俺もカレー好きだから」
佐藤「時間旅行関係なくなったじゃねえか」
山田「で、未来の俺が帰ろうとしたから、最後に聞いたんだよ」
佐藤「何を?」
山田「『未来のこと、もう一個だけ教えてくれ』」
佐藤「まあ聞きたいよな」
山田「『俺たち、78歳でも漫才やってる?』」
佐藤「……ちょっと気になるな」
山田「そしたら未来の俺が、お前の方を見て」
佐藤「俺を?」
山田「急に泣き出した」
佐藤「おい待て」
山田「肩震わせて」
佐藤「俺、死んでんの?」
山田「『佐藤……』」
佐藤「やめろやめろ」
山田「『佐藤は……』」
佐藤「なんだよ」
山田「『ラーメンを食べた』」
佐藤「俺も陶芸家になったの!?」
山田「今、滋賀で一緒に工房やってる」
佐藤「コンビ続いてんじゃねえか!」
山田「お前がツッコミながら壺焼いてる」
佐藤「どんな工房だよ!」
山田「俺が形を崩すと、お前が『何してんねん!』って」
佐藤「漫才より天職かもしれんな!」
山田「だから明日の昼どうする?」
佐藤「カレー食うわ!」
山田「未来変わるぞ?」
佐藤「陶芸だけは避ける!」
山田「でもカレー食べた未来で、俺たち何やってるんだろうな」
佐藤「知らんよ!」
山田「もしかしたら漫才で売れてるかも」
佐藤「お、それならいいじゃん」
山田「78歳で、今日とまったく同じネタやってる」
佐藤「成長してねえじゃねえか!」
山田「大丈夫。未来の俺が今日の客の反応も教えてくれたから」
佐藤「それ先に言えよ! どうだった?」
山田「『まあまあ』」
佐藤「未来変えろ! もうええわ!」
二人「どうもありがとうございましたー!」
私の評価は95点
読んでみた感想としては、
95点。正直100点でもいい。
かなり私の好みに合っていた。
まず面白かったのが、「未来から来た自分」という設定を使って、未来の情報を教えてもらおうとするところから、話がどんどん変な方向へ進んでいくところだ。
特に好きだったのが、ラーメンを食べる話だ。
ラーメンを食べる。
替え玉をする。
満腹になって昼寝する。
夜眠れなくなって動画を見る。
なぜか陶芸の動画を見る。
その結果、陶芸家になる。
一つ一つは一応つながっている。
しかし、それを積み重ねていくと、とんでもなく遠いところへ行ってしまう。
「風が吹けば桶屋が儲かる」に近い回りくどさがある。
以前、AIに「何かおもしろいこと言って」と頼んだときにも感じたが、私はこういう、
一応理屈は通っているのに、その理屈を追いかけていくと変な結論にたどり着く
という笑いがかなり好きらしい。
最後のオチも好きだった
もう一つかなり好きだったのが最後だ。
未来の自分の話を聞いていくと、最終的には二人とも陶芸をやっている。
しかも一緒に工房をやっている。
漫才をやめてしまったようにも見えるのだが、話を聞いていくと78歳になっても二人で同じ漫才をやっているらしい。
未来の話をして散々ふざけていたのに、最後には、
なんだかんだでずっとコンビを続けている
という、少しほっこりする話になっている。
その上で、未来人なら今日の漫才の客の反応も知っているはずだという話になり、
「まあまあ」
と言われて、
「未来変えろ!」
で終わる。
未来から来たという最初の設定を最後のオチでも使っている。
漫才全体がきちんと一つにつながっていて、最後まで読んだときのまとまりもよかった。
気になったところもある
もちろん、まったく気になるところがなかったわけではない。
最初に年齢について触れる場面があるのだが、文章だけで読んでいると二人の見た目が分からない。
そのため、一瞬、
「この二人って何歳くらいなんだ?」
ということが気になった。
実際の舞台なら芸人を見ればだいたい分かるので、それほど問題にはならないのかもしれない。
もう一つは、先ほど褒めたラーメンから陶芸へ進んでいく部分だ。
発想そのものはかなり好きなのだが、少し長い。
回りくどいこと自体がこのボケの面白さでもあるので難しいところだが、もう少し短くしてもよかったように思う。
とはいえ、実際の漫才としてテンポよく話せば、それほど気にならない可能性もある。
そのため、この二つを少し減点して95点とした。
普通に面白かった
漫才を作らせる前は、
「AIに漫才なんて作れるのか?」
という疑問があった。
一方で、最近のAIとの会話には目を見張るものもある。
そのため、期待半分、不安半分といったところだった。
結果として、少なくとも今回についてはかなり面白かった。
もちろん一回生成しただけなので、ChatGPTがいつでもこのくらいの漫才を書けるという話ではない。
単純に今回の一本が、かなり私の好みに合っていた可能性もある。
それでも、ほとんど条件を指定せずに作らせた漫才を読んで、
「これ、普通に好きだな」
と思ったのは少し意外だった。
そして、ここまでやると別のことも気になってくる。
ChatGPT以外の生成AIに、まったく同じ条件で漫才を書かせたらどうなるのだろう。
ということで、Geminiにも同じプロンプトを投げてみることにした。
