47都道府県を戦わせたら、何を「強さ」とするかで覇者が変わった

47都道府県がそれぞれ独立した勢力になって、最後の一つになるまで戦ったらどこが勝つのか。

そんなシミュレーターを作った。

実際にブラウザ上で遊べるようにもしてある。

→ [都道府県天下統一シミュレーターで遊ぶ]

最初はもっと単純に考えていた。

人口が多い県ほど兵力も多い。隣の県に攻め込んで、勝ったら領土になる。これを繰り返せば、そのうち日本を統一する県が出てくる。

ただ、それではほとんど人口ランキングになってしまう。

せっかく都道府県を戦わせるなら、人口以外の違いも入れたい。

そこで実際の統計データを使って、

  • 人口
  • 製造業
  • 食料自給率
  • 森林率
  • 電力
  • 都道府県同士の隣接関係

などを勢力の能力に反映することにした。

人口が多ければ兵力を確保しやすい。

工業力が高ければ軍事力も高くなる。

食料が足りなければ、時間とともに人口が減っていく。

山が多い県は防御側で少し有利。

発電量が需要に対して不足していれば、工業力に若干の悪影響が出る。

さらに、戦闘にはランダム性を持たせた。

強い方が必ず勝つのではなく、格下が勝つこともある。

一度の戦闘で都道府県一つの支配権が移るので、運が悪ければ大勢力でも領土を失う。

そんなルールを作って、とりあえず1000回戦わせてみた。

北海道がやたら強い

最初に全国47都道府県で1000回実行してみると、北海道がやたらと強かった。

設定を多少調整しても、北海道が全国統一する割合がかなり高い。

なぜだろう。

実際に一回の戦争を地図で眺めてみると、北海道は東北を比較的すんなり飲み込む。

北陸や関東まで来ると、さすがに止まる。

領土を取ったり取られたりする。

ところが、そこで関東を突破すると、そのまま勢いに乗って全国を飲み込むことが多かった。

考えてみれば北海道の立地は特殊だ。

北海道が他県と接続しているのは青森だけ。

しかも海を越える戦闘なので、攻撃側には不利な補正を入れている。

北海道から青森へ出るのも大変だが、青森から北海道へ攻め込むのも大変。

そして一度青森を取って南下を始めれば、背後から攻撃されることがない。

本州中央部の県が何方向もの敵を警戒しなければならないのに対して、北海道は基本的に一方向だけを見ていればいい。

地図の端は強かった。

九州7県だけで試したときにも、佐賀としか接していない長崎や、南端の鹿児島が予想以上に強かった。

人口や工業力とは別に、単純な隣接関係だけでもかなり大きな差が生まれるらしい。

30県取ったら、ほぼ勝ち

勢力が大きくなると、どのあたりから止まらなくなるのかも調べてみた。

1000回の全国シミュレーションで、「一度でも一定数の県を支配した勢力が、その後全国統一した割合」を集計するとこうなった。

到達した県数その後の全国統一率
5県14.1%
10県27.4%
15県43.6%
20県60.5%
25県77.2%
30県96.3%
35県100%
40県100%

30県まで取ると96.3%。

ほぼ勝ちである。

領土が増えれば人口も工業力も食料生産力も兵力も増える。

増えた国力でさらに領土を取る。

その領土が次の国力になる。

あるところを超えると、この循環を他勢力が止められなくなる。

北海道が関東を突破した後、そのまま全国を飲み込むように見えたのも、このあたりが関係していそうだった。

でも、この北海道の強さは妥当なのか

ここで疑問が出てきた。

北海道が強いという結果は出た。

しかし、それは本当に「北海道が日本最強」という意味なのだろうか。

そもそも、このシミュレーターでは私がルールを決めている。

例えば、勢力全体の兵力の何%までを一度の戦闘に投入できるのか。

最初は70%にしていた。

これを30%まで下げてみた。

すると結果が大きく変わった。

1戦への動員上限北海道東京
30%39.6%33.8%
50%43.3%25.5%
70%60.6%12.2%

70%なら北海道が圧倒的。

30%なら北海道と東京がかなり接近する。

巨大な勢力が全土の兵力を一つの戦線へ集中できる世界ほど、領土を広げやすい北海道が有利になるらしい。

逆に動員できる割合を減らすと、最初から一県だけで大きな人口を持つ東京が強くなる。

たった一つの数字を変えただけで、かなり違う日本になった。

人口の影響を変えてみる

次は人口を軍事力にどれくらい反映するかを変えてみた。

人口はそのまま軍事力にしているわけではなく、人口の指数を設定している。

指数を0.5、0.7、0.9と変えて1000回ずつ戦わせてみた。

人口を強く反映するほど、東京は強くなった。

これは予想通りだった。

一方で福岡は逆だった。

人口の影響を弱くすると福岡が強くなり、強くすると福岡の統一率が下がった。

「人口を重要にする=人口の多い県が全部強くなる」ではない。

東京のような桁違いの人口を持つ県との格差も拡大するため、人口の多い県同士でも明暗が分かれる。

しかも地理や食料など、他の条件も同時に存在している。

一つの数字を変えた結果が、そのまま一つのランキングに対応するわけではなかった。

食料を無視すると東京、重視すると北海道

特に極端だったのが食料だった。

このシミュレーターでは外部から食料を輸入できない。

各都道府県は、自分たちが生産できる食料と備蓄で人口を養う。

不足すると人口が減少する。

では、食料不足による人口減少をどれくらい厳しくするか。

その係数だけを変えてみた。

食料不足による人口減少係数東京北海道
059.3%0.5%
548.6%13.9%
1025.4%43.5%
207.1%74.9%

ここまで変わるとは思わなかった。

食料不足で人口がまったく減らない世界では、東京が59.3%で全国統一。

北海道はわずか0.5%。

ところが食料不足の影響を強くすると逆転する。

係数0.20では北海道が74.9%。

東京は7.1%まで落ちた。

つまり、

食料をあまり気にしなくていい日本なら東京が強い。

食料自給が国家の生死を左右する日本なら北海道が強い。

同じ47都道府県、同じ人口、同じ地図なのに、前提を一つ変えるだけで覇者が逆転した。

工業力を極端に重視したら、本当に愛知が天下を取った

では工業力はどうだろう。

軍事力を計算するときの工業力の指数を変えてみた。

工業指数主な全国統一率
0.0北海道 72.8%、福岡 13.5%、東京 12.3%
0.4北海道 32.2%、東京 30.4%、福岡 12.2%
0.6東京 32.2%、愛知 20.0%、北海道 10.9%
1.0愛知 55.9%、神奈川 18.6%、東京 9.1%

工業力を無視すると北海道が72.8%。

工業力の重要性を上げていくと北海道が落ち、愛知が浮上してくる。

そして工業指数1.0。

愛知、全国統一率55.9%。

本当に愛知が天下を取った。

工業力を軍事力へ極端に強く反映する世界を作れば、日本有数の製造業県がそのまま覇者になった。

予想して試したことではあるが、ここまで露骨に結果が出ると面白い。

結局、どの設定が妥当なのか

分からない。

というより、一つの設定を「これが最も妥当だ」と決めること自体が難しい。

人口を軍事力にどの程度反映すべきなのか。

工業力はどれくらい重要なのか。

食料不足はどの速度で人口を減らすのか。

巨大勢力は全兵力の何割を一つの戦場へ集中できるのか。

現実の戦争を厳密に再現しようとすれば、もっと大量の要素が必要になる。

交通網、港湾、航空戦力、燃料、補給線、海上輸送、地形、都市、政治、住民の抵抗。

そこまで行くと、もはや別のものになる。

今回作りたかったのは精密な戦争シミュレーターではない。

現実の統計と地理に、単純なルールを与えたら何が起きるのか。

それを見るためのものだった。

だから、どの設定が最も妥当なのかをこちらで決め切る代わりに、ほとんどのパラメータを変更できるようにした。

だったら、自分で変えればいい

標準設定は入れてあるので、そのまま実行することもできる。

でも、気になるなら数字を変えられる。

人口こそ国力だと思うなら、人口の影響を強くする。

製造業こそ戦争を支えると思うなら、工業力を強くする。

食料安全保障がもっと重要だと思うなら、食料不足の影響を大きくする。

戦争なんて何が起きるか分からないと思うなら、戦力差による勝率への影響を弱くする。

そして1000回戦わせる。

条件を変えれば、同じ47都道府県でも違う日本になる。

もう一つ、こんな遊び方もできる。

「最小限のパラメータ変更で、自分の好きな都道府県を全国統一させる」

東京や北海道なら簡単かもしれない。

大阪を1位にするには何を変えればいいのか。

沖縄ならどうするのか。

佐賀を全国最強にするには、いったい世界のルールをどこまで書き換えなければならないのか。

そこまで含めて遊べるように、ブラウザ版も作った。

どの都道府県が本当に最強なのかを決めるシミュレーターではない。

自分が「何を強さと考えるか」を数字にして、その世界で47都道府県を戦わせるシミュレーターである。

実際に設定を変えて試してみたい人はこちら。

→ [都道府県天下統一シミュレーターで遊ぶ]