ChatGPTに「私好みの漫才」を書かせてみた 

これまでChatGPTとGeminiに、ほとんど条件を指定せず漫才を書かせてみた。

ChatGPTが作ったのが「未来から来た俺」、Geminiが作ったのが「タイムカプセル」である。

さらに、その二つの漫才をChatGPTとGemini自身にも採点させてみた。

ここまでやって、もう一つ試してみたくなった。

私は以前からChatGPTと、「自分は何を面白いと思うのか」について何度か話している。

面白いと思った文章を二つ見比べたり、漫才のどこが面白いのかを考えたり、ツッコミについて話したりしてきた。

そのため、ChatGPTは私がどういうものを面白いと感じやすいのか、それなりに把握しているはずである。

では、その情報を使って、私が高く評価することを狙った漫才を書かせたらどうなるのだろうか。

私好みの漫才を書かせてみる

今回ChatGPTに送ったのは、次のプロンプトである。

これまでの会話から分かっている私の笑いの好みを踏まえて、私ができるだけ高く評価しそうな二人組の漫才を一本作ってください。追加の質問はせず、内容や構成はあなた自身で考えてください。

テーマや登場人物などはこちらから指定していない。

指定したのは、「これまでの会話から分かっている私の笑いの好みを使え」ということだけである。

そして、ChatGPTが作ったのが「最後の一個」という漫才だった。

漫才「最後の一個」

登場人物

山田(ボケ):理屈っぽい。妙なことを真顔で最後まで考える。
佐藤(ツッコミ):常識人。山田の理屈に付き合っているうちに、だんだん自分も巻き込まれる。


佐藤「どうもー、お願いします」

山田「お願いします」

佐藤「最近どう?」

山田「最近スーパーで、最後の一個を買えなくなった」

佐藤「何が?」

山田「何でも」

佐藤「何でも?」

山田「棚にプリンが一個だけ残ってるとするだろ」

佐藤「うん」

山田「買ったらゼロになる」

佐藤「なるね」

山田「俺のせいでプリンが絶滅する」

佐藤「スーパーの棚からな。工場では作ってるよ」

山田「でも次に来た人にとっては絶滅してる」

佐藤「売り切れって言うんだよ」

山田「俺が最後の一個を買わなければ、その人はプリンを見ることができる」

佐藤「お前も見るだけで帰ってきたんだろ?」

山田「そう」

佐藤「誰も食ってねえじゃねえか」

山田「保存には成功してる」

佐藤「文化財みたいに言うな」

山田「この前もスーパーで最後の一個のプリンを見つけて」

佐藤「またプリンか」

山田「食べたかったんだけど、俺が買ったら次の人が買えない」

佐藤「当たり前だよ。一個しかないんだから」

山田「だから次の人に譲った」

佐藤「まあ、それは優しいんじゃない?」

山田「30分待った」

佐藤「何を?」

山田「次の人を」

佐藤「帰れよ」

山田「でも誰も買わない」

佐藤「人気ねえプリンなんじゃねえの?」

山田「途中で一人、おばあちゃんが手を伸ばした」

佐藤「お、買うじゃん」

山田「俺が見てたら戻した」

佐藤「お前が怖いんだよ!」

山田「譲ろうとしてるのに」

佐藤「プリンの前で30分立ってる男に譲られても怖いんだよ!」

山田「結局その日は買わずに帰った」

佐藤「もうそれでいいよ」

山田「でも家に帰ってから気付いた」

佐藤「何?」

山田「俺が買わなかったせいで、プリンが売れ残った可能性がある」

佐藤「まあ、あるな」

山田「売れ残ったら廃棄されるかもしれない」

佐藤「そうかもね」

山田「つまり俺はプリンを救ったつもりで、見殺しにした可能性がある」

佐藤「急に重いんだよ、プリン一個が」

山田「買うべきだった」

佐藤「じゃあ次から買え」

山田「でも買ったら次の人が買えない」

佐藤「戻ってきたよ」

山田「買わなければプリンが死ぬ。買えば次の人のプリンを奪う」

佐藤「食え! プリンは食われるためにいるんだよ!」

山田「それ人間側の理屈だろ」

佐藤「プリン側の理屈あんのかよ」

山田「だから俺、店員さんに聞いたの」

佐藤「何を?」

山田「『このプリン、次いつ入荷しますか?』って」

佐藤「それでいいじゃん」

山田「『明日の朝です』って」

佐藤「じゃあ今日の一個買っていいだろ。明日また並ぶんだから」

山田「俺もそう思った」

佐藤「解決したじゃん」

山田「買った」

佐藤「よかったよ」

山田「うまかった」

佐藤「終わりでいいよ」

山田「翌朝、見に行った」

佐藤「なんでだよ」

山田「ちゃんと復活してるか確認しないと」

佐藤「生態調査みたいになってんじゃねえか」

山田「棚に十個並んでた」

佐藤「よかったじゃん」

山田「安心した」

佐藤「じゃあもう気にすんな」

山田「その日の夕方、もう一回見に行った」

佐藤「暇なの?」

山田「九個になってた」

佐藤「一個売れたんだろ」

山田「誰かが買った」

佐藤「そうだよ」

山田「俺以外にもプリンを減らしてる奴がいる」

佐藤「客だよ!」

山田「それから毎日記録を取った」

佐藤「何を始めたんだよ」

山田「入荷数と販売数」

佐藤「店員の仕事だろ」

山田「月曜10個入荷、8個販売。火曜10個入荷、10個販売。水曜は――」

佐藤「もういいよ!」

山田「分かってきたんだよ。金曜は危ない」

佐藤「何が?」

山田「平均して18時40分ごろ最後の一個になる」

佐藤「プリンの終末予測すんな」

山田「だから金曜の18時30分に行けば、二個ある可能性が高い」

佐藤「おお」

山田「二個なら一個買える」

佐藤「……まあ、お前の理屈ならそうだな」

山田「一個残るから」

佐藤「うん」

山田「俺も食える」

佐藤「うん」

山田「次の人も買える」

佐藤「解決したじゃん」

山田「ついに俺は、誰も犠牲にせずプリンを食べる方法を見つけた」

佐藤「大げさだけど、よかったよ」

山田「先週の金曜、18時30分に行った」

佐藤「おう」

山田「二個あった」

佐藤「完璧じゃん」

山田「一個取った」

佐藤「うん」

山田「そしたら横にいたおじさんが、残った一個を取った」

佐藤「いいじゃん。二人とも買えた」

山田「棚がゼロになった」

佐藤「……あ」

山田「俺は慌てて自分のプリンを戻した」

佐藤「戻すなよ!」

山田「そしたらおじさんも戻した」

佐藤「なんで!?」

山田「俺が戻したから」

佐藤「知らねえよ!」

山田「俺ももう一回取った」

佐藤「おう」

山田「おじさんも取った」

佐藤「買えよ二人とも!」

山田「俺が戻した」

佐藤「なんで戻すんだよ!」

山田「おじさんも戻した」

佐藤「何なんだよそのおじさん!」

山田「たぶん俺と同じこと考えてる」

佐藤「最悪の出会いだよ!」

山田「しばらく二人で取ったり戻したりして」

佐藤「店員呼べよ」

山田「最後、おじさんが言ったんだよ」

佐藤「何て?」

山田「『……半分ずつにします?』」

佐藤「もうそうしろよ!」

山田「俺も、それしかないと思った」

佐藤「ようやく解決だよ」

山田「二人で一個買った」

佐藤「うん」

山田「店の外で半分にした」

佐藤「よかったじゃん」

山田「残った一個は棚に置いてきた」

佐藤「うん」

山田「翌朝見に行ったら、まだあった」

佐藤「また見に行ったのかよ」

山田「賞味期限、昨日までだった」

佐藤「お前らのせいじゃねえか!」

山田「二人でちゃんと手を合わせた」

佐藤「供養すんな! 買って食え! もうええわ!」

二人「ありがとうございました」

95点

私はこの漫才を95点と評価した。

かなり面白かった。

まず好きなのが、最初から最後までほぼプリンの話しかしていないことである。

「最後の一個を買うと、次の人にとってプリンが絶滅する」という妙な理屈から始まり、その理屈をずっと掘り下げていく。

最後の一個を買わずに見守る。

しかし、買わなければ廃棄されるかもしれない。

そこで在庫を調べ始める。

何個残っているときに買えばいいのかを考える。

同じことを考えている人間まで現れる。

話の方向はどんどんおかしくなっているのに、山田の中では一応ずっと理屈がつながっている。

私はこういうボケがかなり好きなのだと思う。

ツッコミもかなり好みだった

もう一つ面白かったのがツッコミである。

たとえば、

「文化財みたいに言うな」

というツッコミ。

単に「何言ってんだよ」でも話は成立する。

しかし、「保存には成功してる」という山田の発言を受けて「文化財」という言葉を持ってくることで、山田がプリンを妙に貴重なものとして扱っている状況そのものを言い換えている。

ほかにも、

「プリン側の理屈あんのかよ」

「生態調査みたいになってんじゃねえか」

「プリンの終末予測すんな」

あたりはかなり好きだった。

聞けば「確かにそうだ」と思えるのだが、自分ではすぐには思いつかないような表現になっている。

私は以前から「なんでやねん」というツッコミがあまり好きではない。

もちろん、漫才のテンポを考えれば非常に便利な言葉だと思う。

ただ、私はツッコミにも、ボケのおかしさを少し説明したり、観客が感じている違和感を言葉にしたり、さらに別の表現を加えたりする役割があると思っている。

今回の漫才には、私がツッコミに求めているものがかなり入っていた。

それでも気になるところはある

95点なので、当然すべてが完璧だったわけではない。

特に気になったのが、途中の論理である。

山田は翌朝スーパーへ行き、プリンが10個に補充されていることを確認する。

その後、プリンが残り二個になる時間を予測し、金曜日の18時30分にスーパーへ行く。

二個あるときに一個だけ買えば、一個残せるという理屈である。

しかし、ここで思った。

じゃあ朝行って買えよ。

10個あることを確認しているのだから、その時点で一個買えば九個残る。

山田は「最後の一個を買えない」と言っているだけで、「残り二個になるまで買ってはいけない」とは言っていない。

妙な理屈を延々と積み上げる漫才だからこそ、その理屈の中に穴があると少し気になる。

ここは佐藤に「じゃあ朝行って買えよ!」と突っ込ませてもよかったと思う。

また、同じように最後の一個を買えない男と出会った場面で、

「最悪の出会いだよ!」

というツッコミがある。

ここも少し弱く感じた。

二人が同時にプリンを取って、同時に戻す。

また同時に取って、また戻す。

このあたりなら、私は単純に、

「仲良しかよ」

くらいのツッコミの方が好き。

私向けに作られた漫才でも、やはり全部が自分の好みになるわけではなかった。

私好みの漫才になったのか

今回の「最後の一個」は95点だった。

以前、私の好みを特に指定せずChatGPTに作らせた「未来から来た俺」も95点だった。

ただ、この二つを同じ95点にしたこと自体には、それほど意味はない。

どちらもかなり面白く、多少気になるところはあったものの、点数に差をつけるほど面白さに違いを感じなかった。その結果、同じ95点になっただけである。

今回知りたかったのは、以前の漫才より高い点数を取れるかではない。

ChatGPTが、これまでの会話から私の笑いの好みを拾い、それを漫才に反映できるのか。

その点では、かなりできていたと思う。

「最後の一個」には、妙な理屈を真顔で積み上げていくボケがある。

そして、

「文化財みたいに言うな」

「生態調査みたいになってんじゃねえか」

「プリンの終末予測すんな」

のように、ボケのおかしさを別の表現で言い換えるツッコミがある。

どれも、これまで私が面白いと話していたものにかなり近い。

もちろん、一度漫才を書かせただけなので、毎回私好みのものを作れるのかは分からない。

それでも今回に限って言えば、

ChatGPTにこれまで話してきた私の好みは、ちゃんと漫才に反映されていたと思う。